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<荒井幸博のシネマつれづれ> 火花

2017年11月24日
鮮烈な印象が残る青春映画

 第153回芥川賞を受賞し、300万部超の大ベストセラーを記録した、お笑いコンビ「ピース」又吉直樹の著書「火花」が待望の映画化!

<荒井幸博のシネマつれづれ> 火花

 デビューしたものの全く芽が出ない漫才師の徳永(菅田将暉)。熱海の花火大会で先輩漫才コンビ「あほんだら」の神谷(桐谷健太)と出会い、その天才肌で人間味あふれる素顔に魅了されて「弟子にして下さい」と申し出る。「いいよ」と軽い返事の神谷の条件は「俺の伝記を書くこと」だった。

 売れずに時間だけはある2人は毎日のように飲み歩き、芸について熱く語り合う。勘定はいつも神谷が払うのだが、密かに消費者金融に足を運ぶ神谷。そんな2人を神谷の同棲相手・真樹(木村文乃)は温かく見守る。
 やがて、2人の歩む道は決定的に異なっていく。徳永が少しずつ売れていくのに対し、神谷は大衆に迎合せず、特異な芸風にこだわりコンビの相方とケンカが絶えない。挙句に真樹にまで去られてしまい、借金を抱えたまま姿を消してしまうのだった――。

 メガホンを取ったのは吉本興業所属の芸人で、俳優としても活躍中の板尾創路さん。板尾監督に話をうかがうと、又吉さんは吉本の後輩に当たるだけに「お笑いや漫才を知らない人に映画を撮って欲しくないと思っていたら(監督の)お話をいただいた」という。
 また桐谷さんが神谷を演じたくてスケジュールを4カ月空けて待っていてくれたことや、売れっ子の菅田さんを撮影で40日間も拘束するのは奇蹟に近かったことも明かしてくれた。
 また神谷の相方を演じた三浦誠己さんも吉本の後輩とか。芸人で挫折し、俳優として成功している三浦さんを指して「彼こそ“火花”です」と熱く語る板尾監督に神谷が重なった。

 エンディングに菅田と桐谷が唄うビートたけしの名曲「浅草キッド」に胸が熱くなる。鮮烈な印象が残る青春映画だ。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 火花
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。