徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

2017年11月10日
70年の時空を超えた謎

 佐々木充(二宮和也)は、一度食べた味を記憶し再現できる絶対味覚“麒麟(きりん)の舌”を持つ天才料理人。幼なじみの柳沢健(綾野剛)とレストランを経営していたが、採算度外視の経営がたたり、多額の負債を抱えて閉店に追い込まれ、現在は顧客の「人生最後に食べたい料理」を高値で創作して生計を得ていた。

<荒井幸博のシネマつれづれ> ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~

 そんなある日、中国の料理人・楊晴明(笈田ヨシ)から「大日本帝国食菜全席」を再現してほしいという依頼を請ける。食菜全席とは日中戦争前、天皇の料理番だった山形直太朗(西島秀俊)が世界最高の料理として考案した112品目からなるフルコース。山形もまた麒麟の舌の持ち主だった。
 戦時色が濃くなってくるにつれ食菜全席の存在は闇に葬(ほうむ)られていた。レシピ再現に立ち上がった佐々木が関係者を訪ねてまわるうち、山形という気骨ある天才料理人の人生と驚愕(きょうがく)の事実を知ることになる。そして自身の出自(しゅつじ)についても。

 佐々木を演じる二宮は左利きながら包丁を右手に持ち替え、見事な包丁さばきを見せる。服部栄養専門学校の指導を受けて腕を磨いたそうだが、二宮の父は同校の教授、母は助手だったとか。指導講師から「あなたのお父さんに教わりました」と聞かされたという。
 それは取りも直さず本作にも通じること。世界中の食材が集まる満州の地で、山形が考案する食菜全席の一つひとつは息を呑(の)むほど見事。
 これらの豪華な料理だけでなく、冒頭で佐々木が最期の料理として病室で作るオムライスやカツサンド、柳沢の手による炒飯にも唾をのむ。空腹の状態で観るのはツラいグルメ・ミステリー。

 山形の妻役の宮﨑あおいのほか、竹野内豊、西畑大吾、笈田ヨシらも好演。監督は酒田市を中心に鶴岡・上山で撮影し大ヒットした「おくりびと」の滝田洋二郎監督。
 日中戦争前のエピソードとして山形市の文翔館でも西島、竹野内らが撮影しているのも嬉しい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。