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<荒井幸博のシネマつれづれ> 三度目の殺人

2017年8月25日
見ごたえ十分の法廷ドラマ

 第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した「そして父になる」の是枝裕和監督と福山雅治が再タッグを組み、是枝監督のオリジナル脚本で描いた法廷心理ドラマ。役所広司、広瀬すずら豪華キャストが共演する。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 三度目の殺人

 解雇された工場の社長を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴された三隅(役所)。三隅には強盗殺人の前科があり、犯行も自供しているため死刑はほぼ確実だった。
 弁護を担当することになった重盛(福山)は無期懲役に持ち込むための調査を始めるが、三隅の供述が会うたびに変わり、重盛の中で違和感が芽生える。三隅は本当に犯人なのか?――。
 勝ちにこだわり、必ずしも弁護に真実は必要ないと自信に満ちあふれていた重盛は、初めて心の底から真実を知りたいと思うようになる。

 法廷ドラマといえば、法廷における検察側と弁護側の対峙がヤマ場になりがちだが、本作では弁護士と容疑者の接見室でのやりとりが圧巻で、思わずスクリーンに引き込まれる。これは福山、役所という実力者同士が起こす化学反応によるものだろうか。
 被害者の娘・咲江を演じる広瀬は「海街diary」以来2年ぶりの是枝作品への出演。是枝監督も絶賛しているように、この間の女優としての成長ぶりには目を見張るものがある。

 瀧本幹也撮影監督による陰影を巧みに使った映像、法廷をはじめとする種田陽平による美術、イタリアのルドヴィコ・エイナウディによる音楽もそれぞれ素晴らしく、日本映画では稀有な見応えある法廷サスペンス映画に仕上がっている。
 本作はヴェネツィア映画祭に公式上映される予定。是枝監督の作品が同映画祭で上映されるのは、金オゼッラ賞を受賞したデビュー作「幻の光」以来22年ぶり。

 賞の発表は映画祭最終日の9月9日で、期せずして本作の公開初日と重なる。吉報を刮目して待ちましょう!


<荒井幸博のシネマつれづれ> 三度目の殺人
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。