うつについて (10) / 現代人の心の病
2008年2月8日
前回はうつの発症に関する個人的要因についてお話ししました。今回は環境的な要因についてお話ししましょう。
環境的要因とは
前回はうつの発症に関する個人的要因についてお話ししました。今回は環境的な要因についてお話ししましょう。
環境的要因とは簡単に言えばストレスのことです。ただ、「仕事がストレスだ」と口にする人がいますが、ストレスとは本来、その人と環境的要因との間に生じる軋轢(あつれき)のことです。ですから仕事とストレスは直接結びつくものではなく、本当は「仕事によってストレスが生じている」というのが正しい言葉の使い方、正しい認識なのです。
ストレスも善し悪し
ストレスというと悪いイメージがありますが、人間は適度なストレスがなければ成長しませんし、身につけた力も発揮できません。「練習すれば伸びる」「サボればナマる」――です。
要はストレスのかかり具合が、その人の本来の調子を維持できる程度なのか、維持できない程度なのか、というところが大事なわけです。
物理的・生理的ストレス
物理的な環境要因としては気温、湿度などが挙げられます。暑すぎても寒すぎても、湿りすぎるのも乾きすぎるのも負担になります。
生理的には適切な食事、適切なくつろぎや愉しみ、そして適切な睡眠が重要です。これらが欠けると、例え一時的には踏ん張れても長期的には精神や肉体を蝕(むしば)んでいきます。
仕事上のストレス
仕事や勉強などの作業に目を向ければ、脳の処理能力以上に膨大な作業量がある。あれもこれも同時にある、ノルマや時間制限があって常に焦る、裁量権がなく閉塞感がある、実力以上に責任が大きい、叱責・罵倒・侮辱がひどい、達成感・やり甲斐がなく認めてもらえない、連帯感や支援がなく孤立無援……。こういったことの負担は大きく、逆に言えば、こうならないような工夫が必要になってきます。
心配事のストレス
健康の心配、お金の心配、人間関係の心配、家族など自分にとって大事な人の心配は大きな気苦労です。ましてや、それが同時に複数重なれば精神的な負担は大きくなります。心配の受け止め方、あしらい方も大事です。
要はその人の許容量
以上のような環境的要因がストレスとなってその人の許容量を超え、ニッチもサッチもいかなくなるとうつのリスクは大きくなります。確かに個人個人によって脳のタフさには違いがありますが、度を超えれば誰だって具合が悪くなるというものです。
【今回の先生】 高橋 誠一郎(たかはし・せいいちろう)/
精神科医。昭和63年、山形大学医学部卒業。山大医学部附属病院、米沢市立病院、山形県立日本海病院、山形県立中央病院を経て、平成19年5月に、七日町メンタルクリニックを開業。
