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<荒井幸博のシネマつれづれ> サバイバルファミリー

2017年2月10日
現代の家族映画の秀作
 東京郊外に暮らす平凡な一家、鈴木家。仕事一筋で家庭を顧みない父・義之(小日向文世)、家族を束ねようと懸命な母・光恵(深津絵里)、寡黙な息子の賢司(泉澤祐希)、スマホ命の娘・結衣(葵わかな)。家族はバラバラで、食卓で光恵が呼びかけても義之はテレビ、賢司は音楽、結衣はLINEに夢中。
<荒井幸博のシネマつれづれ> サバイバルファミリー

 ある朝、目を覚ますとテレビ、冷蔵庫、スマホといった電化製品ばかりかガス、水道まで止まっていた。それは鈴木家だけでなく東京中で起きていて、自動車、電車、飛行機に至るまで電気を必要とするあらゆるものが完全にストップしていた。一時的な停電ではなさそう。翌日もその翌日も、1週間たっても復旧の兆しはない。
 そんな中、「大阪は大丈夫らしい」という風評を信じ、義之は一世一代の決断をする。それは廃墟寸前となった東京を一家を挙げて自転車で脱出し、大阪を目指すことだった――。

 本作は置賜地方で撮影して大ヒットした「スウィングガールズ」の矢口史靖監督のオリジナル脚本。矢口監督に話を伺うと「私自身がパソコンやスマホが苦手で、これらのIT製品が使えなくなればいいのにという意地悪な発想から物語を書き始めました」とのこと。
 また「日ごろ便利に使っている道具が使えなくなったら人はどう生きていくのか?」「それらがなくても豊かな暮らしが取り戻せるのではないか」との思いから脚本を書き上げたという。

 電車が動かず駅のホームでたたずむ人の群れ、使えない銀行ATMやスーパーのレジに並ぶ長蛇の列…。映画はあらゆる状況を想定、リアリティを追求して現代人の脆弱さを描き出していく。
 情けない父親の姿に笑いながらも、わが身に置き換えると身につまされたりもする。鈴木家の苛酷な旅を通じて自然の恵みの有難さ、星空の美しさなど当たり前のことに気づかされる家族再生の物語。鈴木家4人のキャストに拍手を送りたい。


<荒井幸博のシネマつれづれ> サバイバルファミリー
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。