徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> 恋妻家宮本

2017年1月13日
愛妻家ならぬ恋妻家

 中学校教師で優柔不断な夫・陽平と、しっかり者の妻・美代子。2人は大学時代に出来ちゃった婚で結婚、その子どもが結婚して独立したため、50歳にして初めて夫婦2人きりでの生活を送ることになる。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 恋妻家宮本

 ある夜、陽平が書庫の本を何気なく取ろうとしたところ書類らしきものがポトリと落ちる。それは何と、妻の署名捺印済みの離婚届だった!     
 浮気をしたこともなく心当たりは皆無。激しく動揺するが、美代子に真意を問い質すこともできず、悶々とした日々を過ごす。職場でも気はそぞろで生徒の悩みに気づかず、別の生徒からは「先生は教師に向いていない」と言われる始末。
 通っている料理教室で悩みを打ち明けると、「奥さんは不倫しているに違いない」と追い打ちをかけるようなことを言われ、疑心暗鬼も募る。そんなある日、美代子が突然「息子のいる福島に行く」と家を空けるのだった――。

 阿部寛と天海祐希がごく普通の中年夫婦を演じていることが面白い。特に阿部は「海よりもまだ深く」「疾風ロンド」と頼りないキャラクターが3作続いている。
 若き日の陽平と美代子を工藤阿須賀と早見あかりが好演。2人は「百瀬こっちを向いて。」で共演済みだが、確実に成長の跡が伺える。

 重松清の小説「ファミレス」を「家政婦のミタ」など人気ドラマを多数手がけた脚本家・遊川和彦が脚色、メガホンも執った監督デビュー作。
 熟年離婚が珍しくなくなった昨今、子どもが独り立ちした後の夫婦がどのように向き合っていくかを描いた作品。笑えるが、身につまされ、そしてホロリとさせられる。「愛を伝えることの大切さ」「正しさより優しさ」がキーワード。

 劇中で吉田拓郎の「今日までそして明日から」が効果的に流れる。あなたも映画館を出れば「私は今日まで生きてみました~♪」と口ずさんでしまうでしょう。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 恋妻家宮本
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。