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<荒井幸博のシネマつれづれ> マダム・フローレンス!夢見るふたり

2016年12月9日
愛された音痴な歌姫!!

 50年越しの持病を抱えながらも歌うことに情熱を燃やす妻と、それを支え続けた夫の笑えて泣ける感動の実話の映画化。

<荒井幸博のシネマつれづれ> マダム・フローレンス!夢見るふたり

 第二次世界大戦中の1944年、ニューヨーク。社交界のトップに君臨するマダム・フローレンスはソプラノ歌手になる夢を追い続け、たびたび小規模のリサイタルを開いていたが、彼女には絶対的オンチという致命的な欠陥があった。それに気づいていないのは本人だけ。
 彼女を勘違いさせていたのは年下の夫シンクレア。愛する妻に夢を見続けさせるため、リサイタルには信望者だけを集め、お人好しのピアニストを雇ったり、批評家を買収したりの奮闘努力は涙ぐましいばかり。
 シンクレアの苦労をよそにフローレンスの夢は、世界中の音楽家憧れの殿堂カーネギーホールで歌うことまで膨らんでいくのだった――。

 実在のフローレンス・フォスター・ジェンキンスが44年10月25日に行ったカーネギーホールでの公演は、チケットは即完売、ホールの外には入り切れない群衆たちが押し寄せたとか。今もアーカイブの1番人気で伝説として語り継がれている。
 フローレンスを演じたのは名優メリル・ストリープ。若き日にオペラ歌手を目指したほどの美声は「マンマ・ミーア」等で証明済み。致命的音痴なフローレンスの歌声の再現は至難の業だったろうが、見事の一言。夫シンクレアには英国ロマンチック・コメディの帝王ヒュー・グラント。
 この待望の初共演はヒューに初のオスカー候補、そしてメリルに20回目の候補確実な評価をもたらせた。伴奏者コズメ役のサイモン・ヘルバーグの演技も特筆もの。

 2月に公開された「偉大なるマルグリット」もマダム・フローレンスをフランスに置き換えた映画で、本国フランスで記録的ヒットとなった。
 どんな嘲笑を浴びようとも、彼女のひたむきに音楽を愛する前向きな姿勢に世界が再注目しているということか。


<荒井幸博のシネマつれづれ> マダム・フローレンス!夢見るふたり
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。