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<荒井幸博のシネマつれづれ> バースデーカード

2016年10月28日
亡き母からの毎年の手紙
 紀子の小学生時代のあだ名は「泣き虫のりこ」。引っ込み思案な性格で、クラス対抗のクイズ大会では、家族が応援に来たにもかかわらず勇気がなくて一問も答えらなかった。落ち込む紀子をいつも励ましてくれたのが母だった。
<荒井幸博のシネマつれづれ> バースデーカード

 だが紀子が10歳の時、ずっとかたわらにいてくれると思っていた大好きな母が病気で天国に行ってしまう。自分の死期を悟った母は、紀子と弟の正男が20歳を迎えるまで毎年バースデーカードを贈る約束をしていた。
 その約束通り、翌年から誕生日には毎年母からの手紙が届くようになる。13歳の時の手紙は学校をさぼっての映画鑑賞のススメ、14歳ではキスの手ほどき…。
 17歳で初めて母の故郷・小豆島(しょうどしま)に行き、中学生時代の母を知る。行動力があって人気者で自分とは大違い。紀子の成長を想い浮かべて手紙を書き続けることは、自分の半生を振り返ることも必要で、悲しみはいっそう深まったことだろう。
 そして20歳を迎える最後の手紙。初めて知る母の真実、やがてサプライズが訪れる――。

 17歳から25歳までの紀子を橋本愛が等身大で伸びやかに好演。幼いころから14歳までを演じた3人の子役が見事に橋本へつないでいく。母・芳恵を宮﨑あおい。「怒り」で演じた愛子と対照的な母性あふれる母親を演じ、演者としての振り幅の広さを見せている。
 木村カエラが歌う主題歌「向日葵(ひまわり)」は書き下ろし。以前から宮﨑とカエラは親しく、「いつか宮﨑主演の映画の主題歌が書けるように頑張る」と語っていたとか。夢が叶って2人で喜び合ったという。

 吉田康弘監督は「どこにもいそうな家族、普通の人の人生にもたくさんのきらめきがある。観た人が自分の物語だと親近感を持ってくれれば嬉しい」と語る。
 山辺町出身の峯田和伸さんをリーダーとする銀杏BOYZの曲が重要な役割を果たしていることにも注目!


<荒井幸博のシネマつれづれ> バースデーカード
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。