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<荒井幸博のシネマつれづれ> 団地

2016年6月10日
現代に問いかける「団地」
代々続く漢方薬店を売り払い、大阪近郊の団地に越してきた山下清治(岸部一徳)とヒナ子(藤山直美)夫婦。ヒナ子はパート、清治は散歩に明け暮れる日々。団地の住人は好き勝手な噂を口にしているようだが、2人は意に介さない。
<荒井幸博のシネマつれづれ> 団地

 だが、清治があることをきっかけに部屋に篭るようになってしまうと、団地の住人はヒナ子に疑惑の目を向ける。「失踪?」「殺人?」と噂はエスカレート。そしてイケメンの真城(斎藤工)が山下家に出入りするようになると団地中に妄想が渦巻き、警察やマスコミが乗り込んでくる事態に発展していく――。

 映画賞を総ナメにした「顔」から16年ぶりに阪本順治監督が藤山直美とタッグを組み、脚本は阪本監督が藤山のために書き下ろした。夫役の岸部とのやり取りはいぶし銀の夫婦漫才を見る可笑しさとペーソスがある。
 団地自治会長夫婦に監督が敬愛する石橋蓮司、大楠道代を迎え、そこに初顔の斎藤工、宅間孝行らを絡ませる。
 斎藤演じる真城の言葉づかいが明らかに変なことに違和感を覚えるが、物語が進むにつれ、これまでの阪本作品では見るを受ける50代の監督2人が同時期に団地を舞台にした映画を発表というのは興味深い。
 両作品とも懐かしさや侘しさを感じるが、昭和30~40年代に「団地」は先進的な住宅設備を備えた憧れの対象だったが、現在は住民の高齢化が進み、空き室が目立つ。
 伴淳三郎・森繁久彌・フランキー堺が共演した「喜劇 駅前団地」は昭和36年の公開作。団地がまさに憧れの象徴だった時代を表し、24作続いた「駅前シリーズ」の契機となった作品だ。
 半世紀の時空を超え、これら3作品を観比べてみたくなった。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 団地
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。