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<荒井幸博のシネマつれづれ> 殿、利息でござる!

2016年5月27日
東北が舞台の感動譚

 江戸中期の仙台藩吉岡宿。藩からの厳しい年貢の取り立てや労役で夜逃げする者が後を絶たず、吉岡宿は寂れる一方だった。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 殿、利息でござる!

 造り酒屋を営む穀田屋十三郎が吉岡宿の行く末を憂い案じていたところ、町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治が、藩に大金を貸し付けて利息を巻き上げるという大胆不敵な計画を提案する。
 明らかになれば打ち首は必至だが、十三郎と篤平治は町の将来のために決死の覚悟で金集めに奔走する。2人の心意気に共鳴する人の輪が次第に増えていく――。

 十三郎役の阿部サダヲはコミカルな演技が持ち味だが、「奇跡のリンゴ」(2013年)の主人公のように一つのことに突き進む男を演じさせたら天下一品。また脇を固める瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平の4人は30代半ばの同世代で、これからの日本映画界を牽引していく存在だ。
 特に切れ者だがやや軽薄な篤平治役の瑛太は現在公開中の「ロクヨン」では、佐藤浩市演じる広報官と対立する新聞記者を憎々しげに演じており、俳優としての振り幅の広さを見せてくれる。
 瑛太は松田龍平との共演が多いそうだが、「今回の龍平が1番良かった。『気持ち悪くて良かったよ』と言ったら怒ってましたけど(笑)」と仲の良さを伺わせる。
 そして、物語の舞台となる仙台出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦が仙台藩7代目藩主・伊達重村を堂々と演じていたのには驚き。この物語が実話というからまたまたビックリ!

 原作は「武士の家計簿」の磯田道史の「無私の日本人」の中の一編。「この行いを末代まで吹聴してはならない」という〝つつしみの掟〟により、知られることのなかった史実。奇跡の感動譚をよくぞ小説化、そして映画化してくれた!老若男女広く観て欲しい。
 スタジオセディック庄内オープンセットで主な場面は撮影され、地元の人たちも俳優、エキストラとして出演している。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 殿、利息でござる!
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。