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<荒井幸博のシネマつれづれ> 64 ―ロクヨン― 前編・後編

2016年5月13日
ベストセラー作品の映画化

 昭和天皇の崩御で7日間しかなかった昭和64年におこった少女誘拐殺人事件通称「ロクヨン」。未解決のまま時効まで1年と迫った平成14年。

<荒井幸博のシネマつれづれ> 64 ―ロクヨン― 前編・後編

 D県警では被害者の父親(永瀬正敏)との交渉が進められていた。ロクヨンに刑事として捜査に当たり、現在は警務部広報官の三上義信(佐藤浩市)は警察を全く信用しない父親の態度に疑問を抱き、ロクヨンを独自に調べ始める。そこで浮かび上がったきたのは警察内部の驚きの隠蔽工作だった。
 一方、記者クラブとD県警との関係は、交通死亡事故を巡り加害者の氏名発表を広報室が拒否したことからギクシャクしたものになっていた。時を同じくしてロクヨンを摸倣した誘拐身代金事件が発生し、2つの事件は複雑に絡み合っていく。

 三上は、警察組織の中で個人として葛藤し、足許の家庭では父親として娘の家出失踪という問題を抱え込みながらもロクヨンの真相を追究し続ける。その先に見えてきたものは――。

 遮二無二取組み走ってきた刑事部から外され、家庭内では自分に娘が嫌悪感を抱き、広報官として記者クラブや刑事部との対立、理想と現実とのギャップなどに悩みながらも真相究明に立ち上がる三上役は佐藤ならではのもの。佐藤はクランクイン前日の決起集会で共演の若手俳優らに「俺をつぶすつもりで全力でぶつかってこい」とゲキを飛ばしたという。

 原作者の横山秀夫は地方紙記者だった経験を活かし「クライマーズ・ハイ」「半落ち」など警察や新聞社内部を描いた秀作が多い。「64(ロクヨン)」もベストセラーになっただけでなく、昨年NHKでドラマ化もされた大注目作だ。
 監督の瀬々敬久は「山形国際ドキュメンタリー映画祭2013」で審査員を務め、自身の監督作「ヘヴンズ ストーリー」では山形ロケを敢行。また本作の冒頭の雪国のシーンは旧高畠駅舎で撮影されている。


<荒井幸博のシネマつれづれ> 64 ―ロクヨン― 前編・後編
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。