徹底して山形に密着したフリーペーパー

<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子

2016年4月8日
県内各地で上映が実現
昨年8月に本欄で紹介した「きみはいい子」をご記憶でしょうか? 
 この映画は児童虐待、子育て放棄、独居老人問題など身近で切実な問題に誠実に向き合った秀作にも拘らず映画館動員は低調に終わった。そこで1人でも多くの人にこの作品を観てもらいたいと県内の有志らが「実行委員会」を結成、上映が県内各地で行われようとしている。
<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子

 舞台は新興住宅地。格差社会により余裕を失ってしまった大人たち。その歪みが子どもたちに暗い影を落としている。
 そんな子どもたちに手を焼く新任教師、幼い娘を折檻してしまう母親、母親の愛人に虐待を受ける男児、話し相手がいない1人暮らしの老女、障害児を抱えながら懸命に働くシングルマザー…。
 それぞれの孤独を抱えて生きる人たちが、人とのつながりの中に希望を見出していく物語。
 監督は呉美保、出演は高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、富田靖子、高橋和也ら。

 原作者の中脇初枝さんは「今日もきっと、どこかで泣いている子どもがいます。でも、私たちは無力ではありません。世界を救うことはできなくても、まわりの誰かを救うことはきっと、だれにでもできると思うのです。観終わった後、そう信じられる映画です」と話している。

 下手をすれば命さえ奪われかねない危険な社会の中で、未発達の体と不安定な心を抱えながら、それでも子どもたちは精一杯生きている。そんな子どもたちを支え、その成長を見守る大人でありたい。
 山形市での上映は4月16日・山形市中央公民館、19日・山形テルサ。米沢市では16日・米沢市伝国の杜置賜文化ホール。長井市では17日・長井市民文化会館。

 季節は初夏の本作だが、桜が「歓喜の歌」とともに重要なモチーフとなっている。各地で上映されるころは、桜は満開か、はたまた桜吹雪が舞っているだろうか。


<荒井幸博のシネマつれづれ> きみはいい子
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。