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<荒井幸博のシネマつれづれ> リップヴァンウィンクルの花嫁

2016年3月11日
黒木華が岩井ワールドに
 派遣教員の皆川七海(黒木華)はSNSで出会った鉄也(地曳豪)と結婚し寿退社。親族が少ないため結婚式の代理出席を「なんでも屋」の安室(綾野剛)に依頼する。
 新婚早々、鉄也の浮気を発見すると、義母・カヤ子(原日出子)から逆に浮気の罪をかぶせられ家を追われてしまう。
<荒井幸博のシネマつれづれ> リップヴァンウィンクルの花嫁

 困り果てた七海が安室に相談すると、手配してくれた最初のバイトは結婚式の代理出席、次が月給100万円という住み込みのメイド。七海は、そこで先に働いていた破天荒な里中真白(Cocco)に惹かれていく。
 実は真白はAV女優。働きづめの生活で体調を崩し、どんどん痩せていくが、仕事への情熱は失せることはなかった。そんなある日、真白は「ウェディングドレスが買いたい」と言い出す――。

 七海を演じる黒木華が山田洋次監督「小さいおうち」(2014)でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞に輝いたのは記憶に新しい。
 黒木は以後も山田監督「母と暮せば」(15)、今年のNHK大河ドラマ「真田丸」でともに主人公の恋人を演じるなど、その純和風の顔立ちから「昭和」と「時代劇」には欠かせない存在になっている。
 岩井俊二監督特有の今を舞台にしたスタイリッシュな本作でも、見事にはまる演技者としての幅の広さを見せている。 
 真白役のCoccoはシンガーソングライターだが、塚本晋也監督「KOTOKO」(12)で感じたように存在感は圧倒的。真白の母親を演じたりりィもシンガーソングライターで最近は女優としての活動が多いが、本作でのりりィには演技にかける特別の覚悟が感じられるものだった。

 タイトルに使用されたリップヴァンウィンクルは米国の小説に登場する主人公の名前だが、「眠ってばかりいる人」を意味する慣用句でもある。村山市出身の村川透監督「野獣死すべし」(1980)で、松田優作が口にしたセリフにも登場するのを思い出した。


<荒井幸博のシネマつれづれ> リップヴァンウィンクルの花嫁
荒井幸博(あらい・ゆきひろ)

1957年、山形市生まれ。シネマパーソナリティーとして多くのメディアで活躍、映画ファンのすそ野拡大に奮闘中。現在FM山形で「荒井幸博のシネマアライヴ」(金曜夜15時)を担当。