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医学のうんちく/逆行性射精

2013年5月24日
 男性不妊症の原因のひとつに「逆行性射精」があります。

精液が膀胱に逆流

 通常の射精では精液は尿道を通って外尿道口から放出され、膀胱(ぼうこう)と尿道の間に閉鎖が起きて精液が逆流することはありません。これに対し膀胱と尿道の間の閉鎖機能が機能せず、精液が体外に放出されず膀胱に逆流してしまうのが逆行性射精です。
 閉鎖機能が少しでも残っている場合は精液の一部が体外に放出されることがあり、乏精液症(ぼうせいえきしょう)と診断されて気が付かないこともあります。ただ射精時のオルガズムには変わりはありません。

医学のうんちく/逆行性射精

不妊症患者の2~3%
 
 東京歯科大学の大橋正和博士は2001年、男性不妊症患者の2・5%に逆行性射精が認められ、無精液症の100%、乏精液症の74%に逆行性射精が認められると報告しています。
 メキシコの研究チームも2011年、男性不妊症患者の3・2%に逆行性射精が認められると報告しています。
 
大きな手術の後などに

 逆行性射精の原因としては、射精に関与する神経に障害をきたす糖尿病、脊髄(せきずい)の損傷、腹部・骨盤部の大きな手術などがあります。
 前立腺肥大症の手術では尿を出やすくするため尿道と膀胱の間の部分を切除するので40~80%の頻度で、前立腺肥大症の治療薬も尿道と膀胱の間を拡張するので0・4~30%の頻度で逆行性射精が発症するとされます。

薬物治療が基本

 射精後すぐに採取された尿に多量の精子が認められれば逆行性射精と診断されます。治療としては、膀胱と尿道の間を閉鎖する作用のある三環系抗うつ薬や交感神経刺激薬があります。ただ三環系抗うつ薬は勃起不全の副作用があるので注意が必要です。
 薬物療法で効果が出ない場合は膀胱内の精子を回収し、人工授精を行うこともあります。


医学のうんちく/逆行性射精
医学のうんちく/Y染色体のお話(中)
山形徳洲会病院長
笹川 五十次 (ささがわ・いそじ)
プロフィール
1982年 富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒業。95年からHawaii州立大学医学部で「雄性細胞の核移植(不妊治療)」について研究。02年に「男子外性器異常の発症における分子生物学的解析」で「とやま賞」受賞。04年に山形徳洲会病院副院長、08年から現職。