前立腺のお話(上)
前立腺とは
前立腺とは男性の生殖器の一つで、膀胱(ぼうこう)の出口に尿道を取り囲むようにして存在します。精液の一部を分泌するのが役割で、成人の正常な大きさはクルミ大ほど。「中心領域」「移行領域」「辺縁領域」で構成されています (図1) 。
前立腺肥大症とは
30歳代後半になると、主に尿道周囲の移行領域から小さな結節ができ始めることがあります。これを「組織学的な肥大」といいます。この組織的な肥大は40歳代では40%、50歳代では50%、60歳代では60%、70歳代になると70%の人に認められるようになります。
肥大結節がさらに大きくなり、前立腺そのものが肥大したものを「臨床的な肥大」といいます。その頻度は50歳以上の男性では5人に1人といわれています。
前立腺は男性ホルモンの影響を受けている臓器です。加齢とともに男性ホルモンは低下する一方、相対的に女性ホルモンは増加します。これが行き過ぎてホルモンのバランスが崩れると肥大が進むといわれています
(図2)
。
前立腺肥大症の診断は
前立腺肥大症は尿道周囲から発生するため、尿道が圧迫されることによる排尿障害(尿が出にくい、尿の勢いがない、排尿後もスッキリしないなど)が認められます。膀胱や尿道に刺激による蓄尿障害(夜間の尿回数の増加、急に尿意を感じるなど)も認められます。
最近では国際前立腺症状スコアを用いて重症度を評価しています。さらに排尿に関する満足度スコアも用いることで自覚症状の面からも重症度を判定しています
(表1)
。
前立腺肥大症の検査としては、超音波による前立腺容量や残尿量の測定、肛門から指を入れて診察する直腸診、尿の流れの勢いを調べる尿流測定などがあります。
前立腺肥大症の治療は
治療は薬物療法として感神経に作用して前立腺の筋肉の緊張を取り除く「交感神経アルファー1受容体遮断薬」や、前立腺そのものを小さくする「抗男性ホルモン剤」が多く用いられています。
薬物療法が無効な場合や尿閉(膀胱にたまった尿を排出できない状態)では手術療法が選択されます。一般的なのは「経尿道的前立腺切除術」です。これは尿道からカメラで見ながら、前立腺の肥大した部分を電気メスで切除する方法です。
尿道や直腸から管を入れ、管からマイクロ波やラジオ波による熱を出して前立腺を縮小する「高温度療法」や、尿道からカメラを入れてレーザーを照射し、肥大した前立腺を焼く「レーザー療法」もあります。さらに形状記憶合金の管(ステント)を前立腺部の尿道に入れて広げる「尿道ステント留置術」もあります。
前立腺肥大症の注意事項は
前立腺肥大症と診断された方は(1)おしっこを我慢しない(2)寝る前に水分をとりすぎない(3)適度な運動をする(4)アルコールを控える(5)体を冷やさない――などの注意が必要です。
1982年(昭和57年) 富山医科薬科大学(現富山大学) 医学部卒業。86年、同大大学院医学研究科終了、医学博士号取得。山形大学医学部泌尿器科講師などを経て、95年にハワイ大学医学部生殖生物学教室に留学 。04年に山形徳洲会病院副院長、08年から院長を務める。
